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第26話 愛国心

مؤلف: 青砥尭杜
last update تاريخ النشر: 2025-02-18 22:20:19

 ケンゾーが治癒魔法による治療の拠点としている王宮内の病院に、カイトが通うようになってから一週間が経過した九月二十四日の昼過ぎ。

 工事現場での事故によって重傷を負った患者の治療を、カイトが一人で滞りなく済ませる姿を見届けたケンゾーは、ふうと一息つく様子を見せるカイトに声をかけた。

「少し、休憩しようか」

 ケンゾーとカイトは連れ立ってケンゾーの書斎に入った。

 カイトが王宮病院に訪れた際にはくっついて回るマヤの姿もあった。

 治癒魔法の習得に励み、次々と患者を治療するカイトにマヤはすっかり懐いていた。

 カイトが治療している間は邪魔にならないよう距離を置いて見ているマヤは、治療に区切りを付けてカイトが休憩する素振りを見せると駆け寄って、ぴったりとそばを離れようとはしなかった。

「ダイキも早かったけど、カイトはそれ以上に慣れるのが早いね」

「ありがとうございます。でも、おじいさんの教え方が分かりやすいおかげだと思います。体系がシンプルに立っていて理解しやすいですから」

「まあ、他の属性とは違って治癒魔法は用途がそもそもシンプルだからね。俺はナーガから下賜されたものをなぞっているだけと言ったほうが近いよ」

「下賜ってことは直接、治癒魔法の内容をドラゴンから聞いたってことですか?」

「うーん、直接的、とでも言おうか……夢を介していたからね」

「夢、ですか?」

 カイトがオウム返しに「夢」を強調して訊くと、ケンゾーはゆったりとうなずいてみせた。

「そうなんだ。俺がテルスに来てすぐ、三日が過ぎた夜の夢にナーガが現れた。白昼夢に似たその夢の中で、俺はナーガから治癒魔法についての一通りを教えられたんだ」

「直に、現実で会ったことは無いんですか?」

「ないよ。他の大陸にいるドラゴンに関しては定かじゃないけど、ミズガルズ王国でナーガに直接会ってるのはセルリアンだけだね。カイトは会ってみたいのかい? ナーガに直接」

 ケンゾーの問い掛けに対して、思案する表情を浮かべたカイトは一呼吸置いてから答えた。

「会って聞いてみたいことはあります。でも、今はまず目の前のこと、治癒魔法と無属性魔法の習得を優先します」

「賢明な判断だな。本当に俺の孫としては出来過ぎだ」

 ケンゾーが満足そうに微笑むと、静かに二人の会話に入るタイミングを探っていたマヤが、白い陶器のコップに注いだ水をカイトに差し出した。

「どうぞ。お兄様」

「ありがとう」

 コップを受け取ったカイトに、マヤはうららかな笑みを向けた。

「お兄様は、すごいです」

「まだまだだよ。ちょっとでも早く全部をマスターしないとね」

「お兄様なら、きっとすぐです」

 マヤが自分の言葉に納得するようにうんうんとうなずいてみせる。

 この世界に来てまだ日の浅い自分に懐いているマヤの存在は、カイトにとっての今いる場所「ミズガルズ王国」という国に対して愛着を抱かせる一つの大きな要因だった。

 愛国心という言葉に「自分の国が一番で、素晴らしいこの国を愛するのは当然」といった軽薄なイメージを持っていたカイトだったが、テルスという異世界に来てから自分がいる国に対する感情と捉え方が変化していた。

 この国を護りたい。

 カイトは自然にそう思うようになっていた。自分が大きな力を持ったことでの変化なのか、祖父のケンゾーと異母妹のマヤに対して、元の世界での家族に対しては感じなかった血の繋がりと呼べるような結び付きを感じるからなのかは分からなかったが、カイトは自分の変化に抵抗を感じなかった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 カイトが王宮病院での治療にあたっていた頃、ミズガルズ王国の王都プログレは街を挙げた祭りのような賑わいをみせていた。

 九月二十四日の朝に発行された号外によって『召喚されし聖人カイト卿の叙任式典の挙行。十月一日に決定す』という吉報への反響の大きさはそのままお祭り騒ぎに発展し、王都のあちこちで歓声が上がっていた。

「ミズガルズは神に護られし国ぞ!」

「然り然り!」

「カイト卿、万歳!」「聖人様、万歳!」「ミズガルズ王国、万歳!」

 カイトを歓迎するムードに包まれる王都プログレでは、真っ昼間からそこかしこの酒場や広場で祝杯を挙げる様子が見られた。

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